『クリスマスプレゼント』
僕のパパは乱暴者でした。
昼間も家にいるようになってから、僕やママをぶつようになりました。
「やめて、あなた。この子が怯えてるわ」
「うるさい、俺に口答えする気か!」
「きゃ!」
「やめろ、ママを苛めるな!」
「うるさい!」
クリスマスイブの夜、パパは僕をぶちました。
パパはずっと前から、クリスマスにはサッカーボールをプレゼントしてくれるようサンタさんに頼んでくれるって約束してたのに、「サンタなんかいるわけないだろ」って僕をぶちました。
だから僕は「こんなパパなんていらない。サッカーボールはいりませんから、優しいパパにしてください」ってサンタさんにお願いしたんです。
その夜、僕はがさごそという物音に目を覚ましました。
(なんの音……あっ、サンタさん――!)
僕はもう少しで大声を上げるところでした。
大きな袋を担いだサンタさんが、僕の部屋の窓から外に出ようとしていたんです。きっと僕の家には煙突がないからです。
僕は夜更かしをする悪い子だと思われたくなかったので、目を閉じてじっとしていました。そのうち、本当に眠ってしまいました。
朝起きると、パパは優しくてかっこいいパパにかわっていました。僕もママも大喜びでした。
でも一つだけ不思議なことがあります。
あのとき、サンタさんの袋の中から「助けて」って声が聞こえてたんです。
「……ねえ、そんなくだらない話がなんだっていうの? わたしはお義母さまを迎える仕度で忙しいのよ」
――だいたい、お義母さまはわたしの失敗を探すのが生き甲斐みたいな人なんだから。まったく、クリスマスぐらい夫婦水入らずにさせてほしいわ――愚痴りだすと止まらない。
「じゃあ、用件だけいうよ」
夫があきれ顔でわたしの愚痴をさえぎる。
「母さんがサンタさんにお願いして、君よりももっといい女性を見つけもらったんだって」
「……は?」
わたしは間抜けな声しかでない。夫はなにをいっているのだ?
夫はそんなわたしに、まるで物分りの悪い子供に教え聞かせるようにつづける。
「だからね、君はもういらないんだ」
「な、なんですって!」
考える間もなく、わたしは夫に掴みかかっていた。
だが夫は激昂するわたしを意に介した風もなく窓のほうを見て、
「ああ、待ってたよ」
はっと振り返ったわたしが見たのは大きな袋と振り下ろされる包丁、そして――
そして、わたしの返り血で服を真赤に染めるお義母さまだった。