『ぼくらの自由研究』
夏休みのはじまる八月一日、ぼくはころされた。
ぼくをころしたのはミキちゃんとユウコちゃんのふたり。さんにんで小学校のうら山にあそびにいったら、ふたりに後ろから頭をなぐられた。
布をぐるぐるにまいたトンカチで、頭を何度も何度もたたかれた。気ぜつしてたから、いたくなかったけれど、頭がいこつがベコンっとへこんだ。それでぼくは死んじゃった。
ぼくが動かなくなったのをカクニンすると、ふたりはバンザイさせたぼくの死体の両手と両足をそれぞれもって、えっちらおっちら、ぼくを運んだ。
終点はうら山のてっぺんにほられた穴だった。そばにシャベルが二本ころがっていたから、きっとふたりでほったんだとおもう。あんまり深くない。これじゃ、大雨がふったら、かぶせた土が流れてしまうかもしれない。
ぼくが家にかえらなかったら、きっとお母さんがケイサツにレンラクする。そして、うら山であそんで木からおちたのかもしれない、とかいう話になって、ここまでケイサツがやってくるかもしれない。
ぼくの死体が穴から見つかったら、これはさつ人ジケンだ、ということになって、ミキちゃんとユウコちゃんがまい日どろだらけになってかえってきたとか、ケイサツはぜんぶ、しらべてしまうかもしれない。
日本のケイサツはゆうしゅうだから、ふたりともすぐ、つかまっちゃうんだよ。ふたりともバカだ。もっと頭のいい子とつきあえばよかった。
でも、ぼくはお母さんに「女の子にはやさしくしなさい」と言われているから、神さまどうか雨をふらせないでください、とおねがいした。ツユもすっかり明けたわ、ってお母さんが言っていたから、おねがいしなくても平気だったかもしれないけど。
おねがいがきいたのか、雨はふらなかった。ぼくは穴の中にいた。いっしょにうめられたトンカチがちょっとくさい。
穴にうめられてしばらくしてから、大ぜいの足音がぼくの上を歩いていった。たぶん、ぼくを探しているんだとおもう。ふたりのほった穴はそんなに深くなくて、かぶせた土の色もきっとちがっているだろうから、ぼくはすぐに見つかってしまうとおもった。
だけど、足音はぼくのまわりを何度もいったりきたりしたあと、そのまま、かえっていってしまった。
どうして!?
ミキちゃんとユウコちゃんは、ぼくをうめた場所がわからなくなるマホウを使ったんだ。そうでなきゃ、おかしいよ。
ぼくは見つからなかったことが、とってもふしぎだった。ふたりはどうやって、ぼくの死体をかくしたんだろう?
考える時間はいっぱいあったから、ぼくはしばらく、そのことを考えてヒマつぶしすることにした。
今野美希と宮本夕子が共同で提出した自由研究は、担任教師から次のような評価をいただいた。
ふたりとも、とってもいい自由研究でした。
夏に埋めた種がちゃんと育つかどうか調べるという発想もすばらしいですし、夏休みまえから準備していたのもすばらしいです。花壇の飾りつけも、かわいらしくて素敵でした。
ですが、学校の裏山に無断で花壇をつくったのは良くなかったですね。今度からはちゃんと、大人のひとに断ってからつくりましょう。
夏休みは終わりましたが、せっかく立派につくった花壇なのですから、これからも責任をもって世話をつづけましょうね。